本を読まない生活なんて

私は事情があって、長く母と会えていません。

先日、電車通学している次男が

「おばあちゃんが、目の前にいたんだよ!

凄い集中してハードカバーの本を読んでいて、俺にも気がつかなかったの」

と、珍しく興奮して話してきました。

今年八十歳になる母。

「本当に、おばあちゃんだったの?」

と信じられない気持ちで尋ねたところ、

「しっかりした栞がみえたから、あれは絶対、おばあちゃん」

と断言してくれました。

しっかりした栞。ハードカバーの本。


間違いなく母でしょう。


孫の子供達が実家へ行って、母や姉に会いに行く自由は全然了承しているので、元気な様子も又聞きで知ることはできます。けれども集中して本を読んでいて、目の前の孫にも気がつかない、というエピソードに、ますます母の気魄というか、健勝ぶりが伝わって思わず笑ってしまいました。


父も母もよく本を読む人でした。

毎週決まって日曜日は、図書館に昼食後には連れていかれ、閉館間際まで過ごし、数冊は借りてきました。

静かな空間と、本の静謐さというか、思い出しても今でも癒される時間でした。


私が関東から結婚のため九州へ越す際に、本棚の本は置いていこうかなと父に漏らすと、父は少し気色ばんで、

「本を読まない生活なんて!本は持っていきなさい」

と言いました。

穏やかな父のめったにない様子に、新居に本だけはたくさん送ることになりました。


本はある方のブログで知ったのですが、開運ツールなんだとか。

その人が手にとる本、その中の言葉が天からのメッセージであったりするのだそうです。


母が読んでいたのはどんな本だったのだろう。