フクロウのモビール

離婚、という結論になったときに夫と二人で一番気にしたのは末の子のことでした。
来春、中学生になるとはいえまだまだ幼くて、離婚してもなるべく子供に変化をかんじさないようにしたい、と思っていました。
親のエゴだ、無責任だ、それなら別れなければいいじゃないかとも周りに言われました。けれども、当事者の2人の関係は2人にしか分からない苦しさもあります。何より子供が敏感にそれを感じとって、両親の仲を修復しようと演技する、嘘を言ってでも和ませるという行動に出たとき、ああ、これは離婚したほうがいいと心から思ったのです。
子供に負担のないように、と離婚後の苗字は変えない、住まいも変えない、夫と子供の会う時間もなるべく作るという条件になりました。
別居からと思って借り始めた部屋が、夫が自宅に滞在している間の私の生活の場所になり、冷蔵庫や洗濯機のないまま、行ききすることになりました。
組み立て式の椅子と机と、すのこベッドのみの部屋。
どうしても、一つ持って行きたかったものがありました。子供達が小さかったころに上野動物園で買った、フクロウのモビールです。

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ステンドグラス風のカラフルなフクロウが窓からの風でゆっくり回る様子をみながら、幼稚園から子供が帰宅するのを待っていた時期。
本当に短い間ですが、私には幸福度の一位くらい満たされていた時間です。
4人の子供の母親になれたのも、夫のおかげでしたし、もうそれはいろいろな軋轢はあったにしても、本当に感謝でいっぱいです。

そういえば、昔観た、ジュリエット・ビノシュの「トリコロール青の愛」で、娘と夫を亡くした主人公が、青いガラスのモビールを眺めるシーンがありました。
昔観たときよりも、あの無表情な主人公の気持ちが分かるようになりました。